住宅購入に踏み切らせる数々の要因
現在は史上空前の低金利であることに加え、住宅を新規に購入したり買い替えを促す税制面の優遇制度も心理的にプラスに作用しています。住宅を買う気にさせる要因を整理してみましょう。
住宅そのものに対する状況の好転
- 土地や住宅の価格の下落
- 史上空前の低金利
- 住宅金融公庫の廃止を控え、多様な住宅ローン*1の出現
*1 前回のトピックスに一例を載せています。
住宅関連の税に関する特例措置
- 住宅ローン減税
平成16年1月1日から同年12月31日までに購入した場合は、住宅購入から6年間は各年末のローン残高から下記比率分を上限として、所得税が戻ってきます(6年間で最大150万円)。
- 2000万円以下の部分 1.0%
- 3000万円以下の部分 0.5%
- 住宅の売却益に対する控除
譲渡所得(売却代金から手数料等の経費を差し引いた残額)から3000万円を控除した額に対して所得税がかかります。3000万円以下の譲渡所得の場合は、無税となります。住宅資金贈与の特例
子または孫が親または祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、550万円までの贈与ならゼロ、550万円を超える場合でも1500万円までは贈与税が軽減されます。
- 住宅取得資金等の相続時清算課税制度*2の特例
20歳以上の子が、親から住宅取得等の資金贈与を受け、住宅の取得または増改築に充てた場合、3500万円まで贈与税がゼロになる制度。
*2 他の要件と異なり、相続時清算課税制度の選択は注意を要します。住宅取得資金の側面だけでなく、総合的な判断が必要となります。
このような環境が住宅を購入しようかと考える人の背中を後押しします。
住宅を買うべきないという人の主張
しかし、住宅を購入すべきでないと主張する人はかなりいます。最大の理由は、住宅購入が投資として巨額で、かつ運用成績が相当に悪いからです。
確かに、現在の状況で住宅を投資と捉えた場合、こんな割に合わない投資はないでしょう。買った瞬間に1割ないし1割5分ほど値段が下がってしまう金融商品ですし、将来値上がりするかどうかまったくわかりません。現時点では将来上がるどころか下落リスクのほうが圧倒的に高いと言わざるを得ません。
一般に、株や投信といったものに対する投資なら、手持ち資金の範囲内での投資となります。ところが、住宅購入は手持ち資金の5倍*3もの額を借りて行う投資だから、予測が外れたときの資産への影響はかなり大きくなります。
*3 物件価格の20%を頭金とし、その他を住宅ローンで支払う場合
持ち家か賃貸か?
ここで、住宅を購入した場合と、生涯賃貸住宅で過ごす場合の資産の比較をしてみましょう。
手持ち資金が1000万円、月々10万円の家賃を支払い、年間100万円の貯金をしているとします。この人が、800万円を頭金にして、4000万円の住宅を購入したとします。30年ローンで支払いをした場合、住宅ローンを完済した30年後の資産を比較してみましょう。
住宅を購入した場合住宅ローンに約5000万円を投資し、30年経過した住宅と940万円の貯金が得られる計算です。

賃貸住宅に住み続けた場合賃貸住宅費用として4000万円を払い、住宅は手に入っていないものの、手元に4800万円の現金が残ります。

この比較をどのように見るでしょうか?賃貸に住み続けた場合の4800万円の貯蓄額を多いと見るか、その後も賃貸住宅に住みつづけるには不安のある額だと考えるでしょうか。このお金でセカンドライフを満喫するための場所を確保する手もあるでしょう。
賃貸住宅に住む場合、収入が減ればそれに応じて住宅のレベルを下げることができます。ところが、持ち家になってしまうとそのレベルが固定化されてしまい変更が難しくなってしまいます。その点が住宅を買うリスクのひとつだと考えます。
一方で、定年を迎えた後にも賃貸住宅で生活していくことは不安があると思います。年齢が高くなればなるほど、賃貸住宅を借りることは難しくなっていくでしょう。
住宅購入は投資か?
では、投資としてメリットのない住宅購入はやめたほうが良いのでしょうか。私は、住宅を買う価値観は車を買うこととほぼ同じと思っています。たとえば、持つことで値上がりする可能性のある車は、世の中にどのくらい存在するでしょうか。おそらく、ほとんどありません。では、なぜ車を買うのでしょうか。それは、車を持つことによってさまざまな恩恵を受けるからだと考えられます。ある意味で投資であることには変わりありませんが、そのリターンが時間や便利さなど必ずしも金銭で計れないものもあるのです。住宅にも同じ一面があると思います。毎日を過ごすところだからこそ、それなりのお金をかける価値を見出せるのではないかと。
もちろん、家を買ったからといって幸せな家族生活や楽しい人生が約束されるわけではありません。家を持つ価値観は、それぞれの家庭で判断していかねばならないことです。
誰でも住宅を買うべきなのでしょうか?
住宅購入が投資としてはあまりメリットがなく、ある意味ぜいたく品の部類に入る以上、誰もが買えるものと考えることはできません。
住宅を買うことによるリスクをきちんと把握しなければなりませんし、買わないリスクも考えておく必要があります。たとえば、将来海外に住みたい希望を持っている人が日本に住宅を買えば、よほど資産を持っているか綿密な海外移住計画を立てておかないと、希望通りにはいかないでしょう。
大事なことは、将来どこでどのような生活をしたいのか、子供にどのような教育を受けさせたいのか、どのように自分の夢の実現を図っていくのか、といったことからぼんやり見えてくるライフプランの中に、住宅購入が当てはまるのかどうかを考えていくことです。

|